海洋のトップ2社が、ドラマチックなサルベージ作戦でそれぞれの役割に合わせ、ダイニーマ®を使用した高強度軽量ロープを選択

困難な状況から、救助隊はダイニーマ®ファイバーを使用した曳航用ロープを使用することを決定しました。理由は2つ。重さと取扱いの容易さです。ダイニーマ®ファイバーを使用したロープは、同じ直径の鋼線ロープと同等の強度を持ちながら、7倍の軽量化を実現しています。これは大きなメリットでした。全部で6つのショアテンション・ユニットがダイニーマ®ファイバーを使用した係留ラインを装備し、このおかげでこの劇的事件と危険が完全に終息するまでの間、モダンエクスプレス号を係留することができました。

悪名高き危険水域

フランスとスペインの間にあるビスケー湾は、船乗りの間では悪名高い水域です。大西洋から押し寄せる大波が突風や暴風雨でさらに悪化するためです。ここでコントロールを失うと、船は海に弄ばれ大打撃を被るリスクが生じます。つまり貨物がずれたり、転覆したり、沈没する可能性があります。救助隊にとっても、特に秋から冬にかけては極端に危険です。

それが、2016年初頭にモダンエクスプレス(Modern Express)号が直面した状況でした。車両運搬船であるこの船は、フランスのル・アーブルに向かう途中で推進力を失い、嵐の中横転しました。まったくなすすべもありませんでした。スペイン沿岸警備隊のヘリコプターが乗組員を救出しましたが、フランスの海岸に向かって漂流していた船自体は、30度から70度にかけて揺れ動いていたため、危険はますます増大しました。恐れられていたのは、船が沈没して燃料の流出を引き起こしたり、風と潮流に流されて海辺のリゾート地ビアリッツの近くで座礁したりすることです。同船を制御下に置くことは絶対に不可欠な状態でした。

 

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モダンエクスプレス号

  • タイプ:RORO車両運搬船
  • 船籍:パナマ
  • 総トン数:33,831
  • 載貨重量トン数:10,454
  • 全長:164m
  • 幅:28m
  • 喫水:8.72m
  • スピード:19ノット
  • 建造:2001年

スミットサルベージ(SMIT Salvage)社、ダイニーマ®を使用したロープを選択

船主は、スミットサルベージ社に支援を求めました。10人からなるスミット社のチームは、直面するであろう極限の状況を理解し、2台の強力なタグボートをチャーターするとともにフランス海軍の支援を確保し、海軍は2機のヘリコプターを装備したフリゲートで現場に駆けつけました。傾いた船の甲板に降りた後、チームは、船首にたどり着くまでに宿泊エリアをよじ登りデッキを降りなければならないという困難に直面しました。そこから、風雨と荒波の中、曳航線を操り固定しなければならないのです。すべて順調に行けば、タグボートはモダンエクスプレス号を風向きに合わせ旋回させて転覆の危険性を減らし、適切な避難港に曳航することができます。

困難な状況から、救助隊はダイニーマ®ファイバーを使用した曳航用ロープを使用することを決定しました。理由は2つ。重量と扱いやすさです。ダイニーマ®ファイバーを使用したロープは、同じ直径の鋼線ロープと同等の強度を持ちながら、7倍の軽量化を実現しています。これは大きなメリットでした。船にウィンチを動かす動力がなければ、ワイヤーはチームが人力で扱う必要があるため、軽量化と操縦性、そして扱いやすさが重要な検討事項でした。

「当社はダイニーマ®で20年以上の経験があります。今回の事故では状況が急速に悪化する可能性があるため、引き揚げチームに加えてダイニーマ®を使用したラインが重要であることは明らかでした。」

最初の試みの失敗で座礁のリスクが高まる

タグの1つにラインをつなげようとする最初の試みは、失敗しました。波の高さが4~5メートルであったにもかかわらず、Lynxのヘリコプターは4人のチームを船の上に降ろすことに成功し、チームは船首までたどり着きました。しかし残念なことに、状況が非常に厳しく、また鋼線の輪の部分が硬かったため、ラインを取り付けることはできませんでした。

その週の初めに遭難した船は、だんだんとフランス沿岸に近づいてきていました。スミット社のチームは翌日も乗船を試みましたが、状況はさらに悪化していました。信じられないことに天候はさらに悪化し、安全上、それ以上試みることはできませんでした。フランス当局は、再びに船に繋げなかった場合、モダンエクスプレス号は座礁する可能性があると警告していました。結局、船はボルドー近郊のアルカションからわずか50海里のところで座礁しました。牡蠣の産地として知られるアルカションは、ヨーロッパ最大の砂丘「Dune de Pilat」でも有名です。

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ダイニーマ®を使用したロープでモダンエクスプレス号を旋回、曳航

突破口は週末過ぎに訪れました。天気が良くなったことから、スミットチームは出直しました。再びヘリコプターで船に降り船首まで登ると、ダイニーマ®を使用したラインをタグボートの一つに繋ぐことができました。

チームが船から離れると、タグボートはモダンエクスプレス号を旋回させ、沖へ向け曳航を開始しました。岸からの距離はわずか26海里でした。しかし、課題はまだ終わっていませんでした。モダンエクスプレス号を安定させ真っ直ぐにしなければなりません。

船は2日後にビルバオまで曳航されましたが、そこではもう一つの課題が待ち受けていました。51度に傾いている船を、どうやって係留所で転覆しないようにするかということです。問題は、船を固定しているすべてのラインを同じ一定の緊張状態にする必要があるということでした。船の荷を降ろしながら、張力を常に調整しなければなりませんでした。そこでスミット社は、ショアテンション(ShoreTension)社に依頼して、同社のシステムを動員してモダンエクスプレス号を確実に係留してもらうことにしました。

ショアテンション社のダイナミック係留システム

ダイニーマ®を使用した高強度軽量ロープを中心に設計されたショアテンション社のシステムは、係留ラインへの負荷を軽減するために高いプレテンションを付加しています。これをフェンダーシステムと合わせることで船の動きを大幅に減らし、ダウンタイムを短縮できます。

モダンエクスプレス号の場合、テンションを一定にすることが船の安全で安定した係留とその後の係留に有利であることが証明されました。ショアテンション社のユニットはサルベージ作業を邪魔することなく、サルベージ作業中の係留ラインの交換やそれに伴うリスクを大幅に軽減しました。

全部で6つのショアテンション・ユニットがダイニーマ®ファイバーを使用した係留ラインを装備し、このおかげでこの劇的事件と危機が完全に終息するまでの間、モダンエクスプレス号を係留することができました。

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